コンテンツへスキップ新型コロナウィルスの影響によって「働く場所」の意味を再解釈することになり、在宅ワークを代表とするように、暮らすことと働くことを連続して考えることが多くなってきている。オフィスで働くことが当たり前だった世の中から、働く場所が再定義され、より生活と働くことが密接な関係となったこれからの社会において、暮らしと働くことを緩やかに分けながらつなげる仕組みがこれからますます重要になるだろう。その問題解決とともに考えなければならないことは、生活のなかにある暮らしを再考することである。モノに溢れた今だから、モノのあり方を整理し、生活を見つめ直す。そこでまずモノの本来持つ価値と新たに吹込む新たな価値を重ねてみる。価値が重なることで、モノとしての強度が増し、繰り返される生活で価値が埋没されていたモノが、再び輝き質の高い暮らしに彩りを添えるモノになると考える。そこで、生活空間の中に一つはある「襖」に着目する。そして、本来の襖のもつ価値に「スペース」という価値を重ね合わせてみる。襖の手前にある観音扉を開くと、中には、折りたたみ式の台が収納されている。観音扉は、扉自身が適度なスペースを生み出し、折りたたみ式の台を設置すると、書斎になったり、ドレッサーになったり、ミシン台になったり、床の間になったり、生活に彩りを添えるような機能が襖の前で展開されることになる。日本の伝統的な建具である襖。襖は日本特有の「可変的」な建具である。そんな可変的な建具である襖に、可変的な空間という価値を重ねることで、襖という価値がアップグレードされ、新しい生活様式の伏線となる襖となる。