ますいす

ますいす

 

この製品は100%枡でできたイスのような玩具のような家具である。また、枡の美しさも感じられる製品である。かつてより計量器や縁起物として扱われてきた伝統工芸品である枡を使って、大切な子どものイスをつくるプロダクト商品である。しかし、このイスはただつくるだけでは終わらない。プロセスを楽しむ家具でもある。それは、産まれてくる赤ちゃんも親もイスも共に成長していくようなプロセスで成長してゆく製品である。そう、それは子どもの成長に従って、積み木を積み重ねていくような感覚にとても似ている。子どもはものすごい勢いで成長していくので、成長を記録するようなイスとしても使うことができる。そう、それは木の年輪や地層のような、年を積み重ねる感覚にとても似ている。このイスは、子どもの成長に応じて使い方が変化する終わりのない成長する家具でもある。つまり未完の家具である。乳児期では、子どもは枡を積み木として遊び、親とのコミュニケーション
を図ることができるだろう。お座りができはじめたら、子どもの成長に合わせて枡を積み重ねることでイスの脚の高さを調整していく。ひじ掛けや背もたれも必要に応じて枡を積み重ね、高さを調整する。このように、積むという行為を通して子どもの成長を感じ、親としての喜びと自覚も育むことができるイスでもある。こうして、ますいすは、単なる家具を超えて、家族の一部のような不思議な家具となる。枡は、かつてから日本庶民の伝統工芸品であった。その枡を未来にどのような形でつなげていくかが大切である。本来の枡の用途は違えど、枡のもつ格子組やあられ組などの組手から生み出される美しい「カタチの強度」で未来へとつなげていく。このような考え方は、カタチの持つおおもとを未来へと伝えるまさに「伝統」そのものである。その伝統を未来へつなげることが、このイスの真髄である。
※企画製作:大橋量器